催眠療法(ヒプノセラピー)も医療従事者として医師等と同様に施術に伴うリスクと倫理を把握していなければなりません。

催眠療法(ヒプノセラピー)を施術するにあたり、催眠療法士として理解しておきたいリスクと倫理についてご紹介します。

北米やヨーロッパでの事情

北米、ヨーロッパではそれぞれ催眠療法協会という機関が催眠療法士の質を保ち、催眠術が療法という分野において正しい使われ方をするように、規則を設けています。

会員になるには協会が認定した催眠療法学校を卒業、および入会試験に合格する必要がある上に学校を卒業しても会員の条件として年間に必須のトレーニング時間などが決められています。

もちろん登録していない催眠術師も存在しますが、催眠療法(ヒプノセラピー)というものが少しづつ浸透してきて、患者も「公認」であるかないか、学校を卒業したかしないかを気にするようになってきました。

また、ちゃんとしたトレーニングも無く、公認されていない催眠術師の施術で何か事故が起こった場合、賠償責任の額は膨大で、そこまでのリスクを負って営業する催眠術師は殆どいなくなりました。

催眠療法士の倫理

ここでアメリカ国内にある「全国催眠療法士会」の倫理規約から一部ご紹介します。

1. 患者の精神的及び身体的健康を何よりも第一に考え、患者の権利と要望は常に尊重されなければならない
2. 不適切かつ性的非行(淫行)を行ってはいけない
3. 常に法律や条例に則った施術をしなければならない
4. 個人情報及び守秘義務は法律に則って厳守されなければならない、それに伴う適切な情報管理を行わなければならない
5. 非行や犯罪を助長するような施術を行ってはいけない
6. 催眠封印*を施してはならない。*他の催眠療法士や催眠術師の施術が効かないように潜在意識を封印することです

上記はごく一部で細かいところまで決められています。

催眠療法(ヒプノセラピー)が浸透するにつれ項目が増えているような気がします。

法に触れる行為」の中には薬やサプリメントを勧めたり、薬の服用を止めさせたりという所謂「医療行為」又はそれに準ずるものが入ります。

サプリ販売の資格や医師免許を持っていれば別ですが、そうでなければ私達催眠療法士が薬やサプリを増やしたり、減らしたりすることは違法になります。

また催眠術で特定の健康商品などを買わせるように暗示をかけることなども禁止されています。

催眠療法(ヒプノセラピー)のリスク

確かに薬を体内に服用するわけではないので体にやさしい療法であるとは言えますが、本当に患者にとってリスクが全くないのでしょうか。

催眠療法(ヒプノセラピー)のテクニックの中には危険と背中合わせ、諸刃の剣になるものもあります。これに関しては現在の催眠療法士会でも意見が二つに分かれます。

まず、催眠療法(ヒプノセラピー)を施術するにあたり覚えておかなければならないリスクをご紹介します。

いくら問診に時間をかけ色んな情報を引き出せても、催眠状態に入り実際に潜在意識と話してみないと中に何が潜んでいるのか分からないということは必ず覚えておかないといけません。

催眠療法(ヒプノセラピー)で使用する暗示は肯定的なものが理想です。

肯定的な暗示は患者に問題を起こすリスクが皆無に近いからです。

しかし、効果的だと思っても否定的又はショック療法のようなショッキングな暗示は患者に大きな精神的負担をかけるだけでなく、身体的にも負担がかかり、暗示が消されるまでその患者は苦しむことになります。

例えば、これはアメリカでの例です。

催眠療法士の資格を持つ医師が患者に禁煙の施術をしたところ、こと細やかにタバコを吸うとタバコに含まれる毒素成分がどのように肺を犯して肺がんになるか説明し、催眠状態の中でその詳細をイメージさせ禁煙させようとしました。

患者はその恐ろしいイメージにも関わらずタバコを止めることなく吸い続けていました。

ところが数か月後肺に痛みを覚えるようになり、おかしいと思って医師ではない催眠療法士に医師から受けた禁煙の暗示を解いてもらったそうですが、あのまま放っておいたら危うく肺がんを発症しているところだったそうです。

潜在意識に強く刻まれた事に身体の細胞と機能は従うのだと言う催眠療法(ヒプノセラピー)の基本中の基本をその医師は知らなかったようです。

退行催眠の危険性

最後に退行催眠は極力避けましょう。

退行催眠こそが催眠療法士の意見が2つに分かれるテクニックなのです。

退行催眠はちゃんと訓練を受けた催眠療法士であっても潜在意識と対面してみないと分からない部分が多いので間違いを犯す危険性があるのです。

問題の1つには間違った記憶を本物だとすり替えてしまうことです。潜在意識は善悪の区別が分かりません。

本当は間違った記憶なのに、催眠療法士がそれを本物だと思い退行催眠体験中にその記憶を基に施術を続けると、潜在意識はその間違った記憶を本物だと認識してしまいます。

これは、法医学催眠では致命的なミスになります。そして、退行催眠は患者のアブリアクションを起こす確率が高いということです。

アブリアクションはその人によって症状が多少異なりますが、大抵の場合パニック状態に陥るか、ショック状態、酷ければ心臓発作のような症状が出ます。

最初にアブリアクションの兆候が表れた時又は現れる寸前に適切な対処が求められます。

これはインストラクターの元で訓練を受けなければ難しいです。身体的な負担だけでなく、精神的にもトラウマを消してあげようと思って退行催眠したのに余計にトラウマを酷くしてしまうことになります。

どうしても退行催眠を施術しないといけない場合は何かあったときの準備を十分にして、患者の承諾を得てから退行催眠を行うようにしましょう。

これらの倫理とリスクを理解した上で患者にとって最善の施術をすることを心がけましょう。